パキスタンの宝石商の方とお話していると、
これでもかと勧めてくれる石があります。
もちろん、人を引き付けてやまないピンクオレンジカラーで人気の高い、
ヴェイリネナイト/ベイリネナイトなどは、
選べる数が限られている上に、すでに価格も高騰し、
豆粒のようなサイズでも数百ドルは下りませんので、
いくら勧められても、特別な依頼等がなければ手が出る宝石ではありません。
一方、勧められる中に、火が付く寸前といういささかあやふやな石があって、
これが3種に一つは的中するものがあります。
少し前でしたら、例えば古よりかなり流通している宝石の中にも、
少しアレンジを加えたようなルチルペリドット、ルチルアクアマリン、
ペトロリュームインクォーツ(ガソリン入り水晶)、
または、比較的新しい石ではハンバーガイトやセレンディバイトなどでしょうか。
もはやセレンディバイトなどは、漆黒が重宝されている良い米国では、
非常に人気があります。
そんな、突然むくっと顔を出す寸前で少しずつ収集家の手が伸びているような
レアストーンを今回紹介したいと思います。
もくじ
結 論
今回、古くからの宝石から1種と比較的新しい宝石を1種、
最近比較的広い鉱床が見つかって賑わっている宝石1種の合計3種ご紹介いたします。
- キラキラはブルーでなくとも健在!ライトピンクカラーのアパタイト
- ベイリネナイト(ヴェイリネナイト)に続け! やさしいローズピンクカラーの奇跡の透明石ロードクロサイト
- 光が当たればこっちものもの!大きな輝き! ビビッドライムグリーンカラーのヘルデライト
いずれもその希少性からいえば、もっと人気があっても良いはずです。
しかし、レアストーンというものふとしたきっかけから、突然人気が高騰します。
それでは、それぞれについて、コメントしていきましょう。
アパタイト
硬度は低いものの、まさに目に飛び込んでくるようなブルーのきらめきは、
この宝石の魅力のひとつです。
最近、この石のライトピンクカラーが注目し始めています。
産地は、ほとんどといっていいほど現地でKPKと言われているスリランカの鉱山です。
これは現地糸石のカッターが紹介してくれました。
その独特の輝きは、ブルーほど派手ではありませんが、
内に秘めたような力といいましょうか、時折キラキラと垣間見える不思議な宝石です。
いかんせんアパタイトですので、硬度が高くないところが、
いまひとつといったところでしょうか。
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アパタイト apatite
基本情報 色:青、黄、透明、黄緑等 屈折率: 1.632 ~ 1.646 化学組成: Ca5(PO4)3(F,Cl,OH)1 硬度: 5.0 比重: 3.1 ~ 3.2 結晶系: 六方晶系 産出場所: ...
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ロードクロサイト
ロードクロサイトといえば、不透明でカボションカットされるものがほとんどです。
最初にこの石を見たとき、
ロードクロサイトにこれほど透明な石が存在するとは本当に驚きでした。
以下の画像がその例ですが、
色合いはベイリネナイト(ヴェイリネナイト)に似ています。
以下の画像の宝石は5カラットはありますので、その存在感は圧倒的です。
もちろん、内部の成分により赤みが強くなれば、透明度は減少していきます。
この色合いあたりが、透明度とレッドカラーの折衷ポイントと言えるでしょう。
何にせよ美しい色合いの宝石です。
ヘルデライト
日本名ではヘルデル石としてレアストーンコレクターの間では結構有名です。
この石の特徴は、なんといってもその輝きと透明感です。
発光しているのではないかと思われるほどの輝きは、
まさに蛍光ライムグリーンカラーともいえるでしょう。
近年、パキスタンの小さな井戸が多く点在しているSkardu鉱山付近で、
少し大きな鉱床が見つかりました。
大きな鉱床といっても数メートルほどですので、
今が入手のタイミングだと思われます。
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ヘルデライト(ヘルデル石) Herderite
基本情報 色:無色、淡黄色、緑がかった白色、透過光では無色 屈折率: 1.59 ~ 1.62 化学組成: CaBe(PO4)F 硬度: 5.0~5.5 比重: 3.02 結晶系: 単斜昌系 産出場所: ...
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あとがき
いかがでしたでしょうか。
パキスタンでは小規模な鉱床がいくつも点在し、
それぞれ数人から10人程度の職人たちが採掘しています。
レアストーンは何の前触れもなく、それらの中から突然湧いて出てきます。
他国の採掘者と違うところは、採掘にあたっては、
常にレアストーンへの心構えがあるところでしょうか。
レアストーンは、非常に分かりにくく、
色味のないものに至っては見過ごされ捨ててしまわれることもあります。
この心の準備が採掘者にあるとないとでは、大きな違いがあります。
そのため、例え指先ほどの小さな小さなレアストーンでさえ、
パキスタンではこの世にもたらされるのです。